資産運用初心者向け海外ETF入門ーインデックスファンドと何が違うのか
ETF・インデックスファンド初心者向け事始め
これまで投資経験があまりない方が資産運用の勉強を少し始めると、必ずと言っていいほど、次のような文章を本で目にしたり、FPにアドバイスを受けたりするでしょう。
- 資産運用をはじめるなら、ETFやインデックスファンド※を購入しましょう
- インデックスファンドはアクティブファンドよりも魅力的な商品です
- ETFやインデックスファンドであれば、個別株を選択するよりも手間が省けます
というような内容です。
※ETFもインデックスファンドなのですが、ここでは、ETF以外の上場されていないインデックスファンドを指すことにします。
ETFやインデックスファンドを試して運用している私としては、上のような内容にすぐに同意できる点もありますが、一方でメッセージを簡単にしすぎているな、と思うこともあります。
これから資産運用を始めようかという方や投資経験が短い方は、そもそも次のような疑問を持たれるかと思います。
- ETFとは何か
- インデックスファンドとは何か
- ETFはインデックスファンドと何が違うのか
- ETFやインデックスファンドは資産運用で結局のところ最強の金融商品なのか
今回は、こうした疑問にお答えしながら、一般によく言われることを自分の経験を踏まえ、実際どのような問題が資産運用をするうえで直面するのかをご説明していきたいと思います。
目次
- ETFとは何か
- ETFとインデックスファンドとの違い
- ETFのメリット・デメリット
- 最強の投資の器(ビークル)はETFかインデックスファンドか
- 目先忘れることができない売買タイミング
- まとめ
1.ETFとは何か
ETFは、Exchange Traded Fundの略で、TOPIXやダウ平均株価、S&P500といった何らかの指数に連動した投資信託です。
2.ETFとインデックスファンドとの違い
「あれ、ETFもインデックスファンドと同じで投資信託なの?」
とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
では、ETFとインデックスファンドは何が違うのでしょうか。
ETFとインデックスファンドの最大の違いは、ETFはトヨタ自動車株といった個別銘柄のように証券取引所に上場しています。
一方、いわゆる運用会社がインデックスファンドと呼んでいる投資信託は上場はしていません。
2.1 手数料の違い
ETFは上場しているので、証券会社を通じて売買する際に取引手数料がかかります。インデックスファンドを販売する証券会社や銀行からすれば、販売手数料※ということになります。
※投資信託の業界では、販売手数料という言葉を使うことがおいのですが、この言葉は投資信託を販売する側の言葉であって、投資家目線でいうところの購入手数料だと思いますので、当記事では購入手数料を使用します。
一方、インデックスファンドの場合は、取引手数料はかからないものの、証券会社や銀行を通じて購入する際には、購入手数料が発生することもあります。
ただ、最近ではインデックスファンドの場合は、購入手数料の必要ない「ノーロードファンド」であることが多く、個人投資家にとっては、資産運用を始めるにあたってコストがかからず、うれしい投資環境になってきています。
2.2 信託報酬
コストでETFとインデックスファンドの共通している点は、運用にかかわるコストが発生することです。これは、信託報酬と呼ばれ、毎日発生するコストです。
ETFもインデックスファンドのいずれも、アクティブファンドと比較すると信託報酬は安いです。その意味で、ETFもインデックスファンドも運用に伴いコストは安く済ませることができます。
信託報酬は必ず発生するコストで、運用にとっては“運用成績に働くマイナスのパフォーマンス”項目ですので、信託報酬が安いにこしたことはありません。
信託報酬は、通常%(パーセンテージ)で表示されます。運用資産にその%をかけたものが信託報酬として毎日徴収されます。
3.ETFのメリット・デメリット
ここでは、ETFのメリット・デメリットを考えてみます。結論から言うと、ETFはインデックスファンドと比較して、金融商品として優れている面の方が目立ちますが、資産運用の初心者からすると少し手間であることが多いかもしれません。慣れの問題ということもありますので、そのあたりは資産運用で慣れてくれば解決してくる問題とも言えます。
3.1 ETFのメリット
ETFのメリットとしては、次のポイントをあげることができます。
- 購入手数料がかからない(取引手数料はかかる)
- 上場されているので時価・取引値を見ながら売買できる
- 信託報酬が安い
という点などをあげることができます。
3.1.1 手数料
購入手数料については、先ほどもインデックスファンドとの違いで解説しましたが、インデックスファンドを購入する際には、インデックスファンドという金融商品を販売する販売会社に対して購入手数料を支払う必要があります。
しかし、ETFは上場株と同様の扱いですので、購入手数料はかかりません。一方で、上場株を取引する際に、証券会社に売買手数料を支払うのと同じで、取引手数料がかかります。
3.1.2 取引価格
ETFは上場しているので、取引価格を見ながら売買をすることができます。ところが、インデックスファンドは、取引価格を見ながら売買することはできません。これはアクティブファンドも同じです。
たとえば、株式市場が開いている日の、午後1時にある投資信託の買い発注をしたとします。その投資信託の購入価額は、投資信託を発注した日の午後3時の引け後に算出されます。つまり、自分が発注したタイミングでは購入価額がわかっていないことになります。
一方、ETFは上場されているので、自分の取引値はわかっていることになります。また、指値などもできますので、価格に敏感な投資家には便利な金融商品といえます。
3.1.3 信託報酬
信託報酬に関しても、ETFの方がインデックスファンドよりも安いことが多いです。これは、ETFやファンドにより違いますので、ご自身で確認されることをお勧めします。
3.2 ETFのデメリット
ETFにもデメリットというか、海外ETFにおいてちょっとした使いにくさもあります。ここでは、東京証券取引所(東証)に上場している海外ETFと東証上場でないETFについて考えてみます。
海外ETFのデメリットとしては、
- (東証上場の海外ETFは)流動性・出来高が少ないことがある
- (東証上場以外の)海外ETFは外貨建てであり、為替取引が必要となる
等といったことが挙げられます。
3.2.1 流動性・出来高の話
これは、個人的な経験から言える話です。海外で有名なETFが東証に上場しているのですが、それを購入しようと発注をしたのですが、出来高が少ないため、なかなか売買が成立しませんでした。
平時の買いの場合であれば、まあまあ我慢できる状況ですが、これが、パニックをともなう有事の際には、簡単に売却できないリスクがあるということにもなります。私は、そうした流動性のリスクは取りたくないので、東証に上場する海外ETFはあきらめました。
ただし、東証には多くのETFが上場されているので、流動性のあるETFについてはその限りではありませんので、ETF全体を否定するものではないということは付け加えさせてください。
3.2.2 為替取引の話
海外上場のETFについては、当然ながら購入する際には外貨で購入する必要があります。ネット証券で発注する際にも外貨をあてがって購入することになります。つまり、為替取引をする際の取引手数料が必要となります。米国株というような外国株式を取引したことがある方は、慣れてい入る方も多いと思いますが、そうでない方は少しハードルを感じる方もい多いでしょう。
その点、東証上場のETFやインデックスファンドは円建てで購入することができますので、便利です。これは、資産運用初心者にはとっつきやすいポイントですね。
4.最強の投資の器(ビークル)はETFかインデックスファンドか
資産運用を始める方は、一度は目を通したことが良い本として、山崎元・水瀬ケンイチ「全面改訂 ほったらかし投資術 (朝日新書)」があります。
上記では、利便性に関してはインデックスファンドに軍配を上げています。
インデックスファンドは、
- 金額指定売買ができる
- 分配金再投資コースを選択できる
- 自動積立サービスを利用できる
等といった点を挙げています。
これは私も同意なのですが、1点疑問を感じえないのが、純資産についてです。
同書では、
一般的には、投資信託は100億円の純資産があれば安心といわれているようです。
と、他人事のように書かれていますが、100億円程度ではファンド単独の継続性は安泰とは言えません。簡単な計算をしてみれば、すぐにわかります。
たとえば、<購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンドでいえば、信託報酬は0.29%(税抜き)です。
100億円の純資産で、運用会社などが手にすることができる信託報酬は、2900万円です。
加えて、その信託報酬も、次のようにさらに細分化することができます。
- 委託会社(運用会社):0.13%
- 販売会社(証券会社):0.13%
- 受託会社(信託銀行):0.03%
と分けられることができます。
つまり、運用会社のニッセイアセットマネジメントが手にすることができるのは、1300万円ということになります。これでは、ファンドマネージャーへの給与の支払いや事務手続き費用などを考えれば、個人的にはちょっと採算としてはきついのではないかなという気がします。ただ、資産運用規模、つまり純資産が大きくなれば、ファンドマネージャーや事務手続き費用などは固定費に近い扱いですので、運用会社での採算は良くなることになります。
一般に、採算の取れない投資信託を「赤字ファンド」と呼びますが、純資産100億円のファンドでも、採算にのっているファンドとも呼べないことも十分にあり、ファンドの継続性を判断するには時期尚早ともいえます。
5.目先忘れることができない売買タイミング
山崎・水瀬本では、繰り返し繰り返し手数料・信託報酬の話が繰り返されていますが(それ自体は否定しませんが)、実際に取引を始めると直面するのが、売買タイミングです。売買タイミングによっては、手数料や信託報酬分があっという間に吹っ飛んでしまうくらい損をしてしまうことがあります。取引を始める前に散々考えて購入したのに、あの時間は何だったんだ!ということも少なくありません。
投資信託は株式指数などに連動しているため、個別株と比べて大幅な上昇や下落がない分、一度高値でつかんでしまうと取り返すのに時間がかかることがあります。こうしたことがあると、アクティブファンドで、しっかりリスクをとって運用をしてくれるファンドはありがたく感じます。
6.まとめ
いかがだってでしょうか。ETFもインデックスファンドも長所と短所がありますが、投資家の慣れ不慣れで選択すればよいと思います。また、リスクを十分にとっているアクティブファンドであれば、十分投資をするのに値するファンドも存在します。選択肢が多い個人投資家は、投資先を制限することなく検討されるのが一番良いと思います。